SSブログ

[日記](読書) ザリガニの鳴くところ(ディーリア・オーエンズ) [日記]


続いて米国作家、ディーリア・オーエンズのデビュー作にしてベストセラー作品
「ザリガニの鳴くところ」を読んだので感想と記録。

この作品は個人的にタイトルや表紙に惹かればしないものの、
ネットのレビューや評価が非常に高いものだったので、前々から読んでみたかった。

いつものようにほぼ小説の概要は知らず読み進めたので、
ミステリーものなのか、湿地で暮らす女性の半生の記録なのか、
はたまた恋愛小説なのか、時代も、場所もまったくしらなかった。

ノースカロライナ州の湿地帯、そして時代は1960年代を中心に
前後10年程度が描かれている。その湿地帯で一人の男性の死体が見つかる。

湿地帯には貧困層が暮し、富裕層(=白人)は別の村、そしてこの時代の米国では
アフリカ系の人々は「カラード」と呼ばれる村で生活し、
白人と黒人が交わるようなことは基本無い(差別を受けるので避ける)。

物語の主人公は湿地に住む少女で、白人だが、貧困層かつ
沢山いた家族が、父親の素行の悪さや、貧困を嫌い、一人、また一人と去っていく。
父親自身も最後に残った少女を残し、家(というかぼろ小屋)を出ていき
10歳にも満たない少女が1人、湿地で暮らしていくことになる。

この物語は結局のところ、この少女の生涯を語った物語なんだけど
親切なカラードに住むアフリカ系夫妻(日常品を購入できるお店を経営)、
まだ家族がいたころからの知り合いだった白人の少年(のちに結婚)と
その父親、そしてノースカロライナの湿地と自然の描写と、「詩」。
これらと貧困生活の少女の成長と恋愛が絶妙に絡み合い、そして
青年の死体を巡る捜査が同時進行し、エンタメとして成立している。

男性の死は物語で勿論重要なのだが、その事件があることで飽きずに読めるし
その事件を取り巻く状況が、アメリカの階級社会や差別、文化を知ることが
できる。

何とも不思議な作品だけど、最後の展開の切れ味は凄かった。すっきり。
エンタメ作品らしい落としどころ。

でも、最後まで親切に少女(女性)を助けたジャンピン(アフリカ系の店主)が
病気で亡くなってしまうのが一番寂しかったし、じつは
この小説のクライマックスではなかろうか、と思う。

良い作品ですね。
ベストセラーというのも納得です。


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。