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[日記](読書) 傷を抱えて闇を走れ(イーライ・クレイナー) [日記]


イーライ・クレイナーの南部ノワール作品「傷を抱えて闇を走れ」の感想と記録。

この作品の解説を読んでアメリカには、
"南部ノワール"というジャンルがあると初めて知りました。

解説では、北欧ミステリに通ずるものがある(それに匹敵する人気を博すかも)と
ありますが、なかなかどうでしょうか、、。
この解説でも何冊か紹介されている作品は私も読んでいる作品ではあるのですが
なかなか万人受けするのは難しいのかな、と思います。

ただデニス・ルヘイン作品でもあるように、アメリカでも
人種差別、移民問題、暴力、性差別、そして貧困を取り上げた作品も多く
またエンタメとしても面白いので、日本でも人気になってほしいし、
ウイリアム・K・クルーガーの作品のように、アメリカの自然だったり家族だったり
良い面もしっかり伝えている作品があったりするので、そちらも人気になってほしい。

ということで、この作品はアメリカ南部、アーカンソー州のとある超田舎の話で
アメフト(ランニングバック)の才能は抜群だけど、超問題児(超問題家族)ビリー、
そしてその新任コーチ、その家族の交わりがメイン。
新任コーチ・トレントは、ハリウッドと呼ばれカリフォルニアから移住してきたが
そもそも前職では、成績不振で解雇、逃げるようにこの地に来て
そして妻と一緒に、再びコーチ職で復活を目論んでいる。

その為、この素行の超悪いビリーを何とか試合に出場できるまでの日常に戻したいが
とにかく、このビリーとその家族は問題だらけで、そんな中、
ビリーの事実上の養父(母親の恋人)が、何者かにより殺される。

養父も勿論、「最悪」な人物で、
喧嘩(というかビリーへの虐待)を発端に、ビリーが殺してしまったか、
みかねた母親が殺したか・・・、という嫌疑と、町中の噂になる。

一方でその養父が死んだ日、コーチ・トレントは妻からビリーを諭すように言われており
なぜか、早朝、トレントが自家用車を洗車しており、妻が怪しく思う。

トレントは嫌疑がかかったビリーを庇い、自身の家にかくまうが
そこには、トレントの自慢の妻と娘もおり、妻がビリーの素行の悪さから
娘との関係性を危ぶむ。そして、ビリーと娘・ローナは「読書」をきっかけに
親しくなり・・。

結局のところ、だれもハッピーになっていない結末で
一瞬だけ、ビリーの更生と未来が見え隠れするのですが、
コーチ一家は残念な結末ですし、ビリー、そして母親も決してハッピーじゃない。

特にこの母親の言葉が悲しい。
これが息子にできる最大限だった、という・・・

つまり最悪なボーイフレンドと付き合い、なんとかお金を工面し
その結果として、そのボーイフレンドから自身も、そして家族も虐待を受ける
それが最大限(のしてやれること)

ちなみにこの作品は、アメリカの新人賞(MWA)をうけておりまして
こういった社会(生活環境)を鋭く描いているようです。

決して後読感が良い作品ではないですけど、興味深い作品ではあります




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