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[日記](読書) 約束の道(ワイリー・キャッシュ) [日記]


つづいて、ワイリー・キャッシュの「約束の道」を読んだので記録・感想。

ワイリー・キャッシュという作家は全く知らなかったのですが、ネットで本作が
割と好印象だったのと、概要を読んで面白そうだったので読んでみた。

ワイリー・キャッシュは米国生まれの作家なのだが
デビュー作は英国のCWA新人賞(ミステリー賞)を受賞しているらしい。

本作品は彼の生まれ故郷でもある、米国南部を中心とした父親と娘たちの
逃避行を通じて、心を通わす作品ということで、
文庫の概要には「実力派が描く感動の物語」とある。果たして。

作家自身、南部の出身と言う事で想像するに現実に近いんだと思う。
まず、メジャーリーガーを目指して地域リーグ(マイナー)の元選手の父親、
そして普通(アラスカ出身)の女性のもとで、生まれた少女二人。12歳と7歳。
既に父親は野球をあきらめ、母・娘のもとを逃げ出し、人に散々借金をしている、
つまりダメ男。母親は娘たちを養うために何とかしてそうだが、ドラッグかなにかで
死ぬ。娘(12歳)の回想では、ベッドはなくサイズの合わないマットレス生活で
母親が死んだ際にはお金も、食べるものも一切なかったとのこと。

まもなく擁護施設に入れられ、その数か月後、父親=ダメ男が戻ってきて
彼女たちに「父親に戻りたい」とか養護施設の職員に
「騙されて親権を手放した(ので、娘たちにあう権利があるとか)」
まるでダメ男の典型。そして、娘たちを半ば強引に連れ出す。

「感動作品」と最初に分かっているので、「あぁ、最後は父親と娘が心通わす」と
いうことは火を見るよりも明らか。

小説冒頭には「ダメ男」の限りを尽くすんだろう、とも容易に想像できる。
はたして物語はそのように進み、ダメ男はチンピラから金を盗み命を狙われた挙句
さらに、再び娘たちから逃げる。(娘たちは再び養護施設へ、その後母の実家へ)
そして最後、「そこでマテ」という手紙が彼女たちの元に届くわけだが。

正直、感動も何もなかった。だって分かっているんだもの。
感動的なセンテンスはいくつかあるのも事実。
例えば、娘たちが野球が大好きで、父親とマイナーを過ごしたソーサのファン。
上の娘の記憶にある母親と妹と父を応援にいったマイナーチームの試合で
マスコットが原因で散々な目にあう(じつはこのマスコットの中身は父親で
既にこの時、野球をあきらめなければならなかった)
あとは最後に娘が父親にサインをおくるシーンとか。
でも、ふーん、という感じ。

ただこの作品が一気に読ませるのは(少なくとも私は一気に読めた)、
アメリカの野球への熱狂や(時代はソーサとマグワイヤのHR争いの真っただ中)、
娘(12歳)の心理がうまく絡ませているところかな、と。
あとはダメ男はダメ男で、うまく更生して貧乏でも娘たちと暮らしています的な
結末にならなかったことかな。

ダメ男であることは間違いないし、また逃げるんかい!?というオチだし
彼女たちを追う裁判所の後見人の判断(娘たちをだまし、父親を捕まえようとする)は
間違いないと思う。

ビーチに連れて行ったり、娘のためにいじめっ子と勝負したりするところは
父親だなぁと思ったりするけど、ペットじゃないので気分が向いた時に
父親面するのはどうなんだろうなぁ、誰でもできるよなぁ。
チンピラから大金を盗んだあとなら。

ちなみにこのダメ男のために、ダメ男の母親も無残に殺されてしまう。
それでも、「待て」と娘たちに手紙を送るなんてダメ男すぎるなぁ。

逆にそれでも子供にとっては血のつながった「父親」がいいのだろうか。
私は運が良かったな、とおもう。まともな両親のもとに生まれて。


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