[日記](読書) 網内人(陳浩基) [日記]
残虐ミステリーを一旦離れて、香港の作家、陳浩基氏の「網内人」を読んだので
その感想と記録。
陳浩基の作品は、「世界を売った男」「13・67」があるが、いずれも面白い。
短編集「ディオゲネス変奏曲」も面白いので、ハズレ無し作家と思う。
読みやすいけど、少し、ひねって合って「やられた」と思うエンタメ作品。
「網内人」は、"MOUNAININ"と呼ぶらしく、ネットを連想されるが、
現実の人間関係、という意味もあるみたい(と言う事が裏表紙に説明されてあった)
今までの作品は、時間軸はバラバラだけど刑事ものというか、硬派な感じがする
作品でしたが今回は、凄腕ハッカー(探偵)の物語で、現代。
登場人物、ストーリーは、香港で生活する姉妹(父も母も死亡し、姉が働き10代の
妹を養う)が、妹の自殺によって、前述の凄腕ハッカー(アニエ)に、
なけなしの全財産をかけて妹の「死因」調査依頼をする。
正直、最後の最後まで、陳浩基らしくなく「普通」のエンタメ作品だなぁ、と思ってた。
ネットやスマホ、監視カメラ、ドローン、最新の機器やテクノロジーを利用して
自殺に追いやった犯人調査を行うアニエ。姉・アイへの技術説明も今時の人なら
ある程度しっていることだし、少々うざったいし、なんとなくどこかで見聞きしたような
ストーリーで、読みやすいのいいことだけど、それでも今までの硬派で、
読者をだますような感覚は無かった・・・のだが。
それでも巧妙に全く違うベンチャー企業の話やら
ネット(掲示板)の会話などなど、それとなく意味深な章や表記はあるにはある。
・・で、最後にとんでもなく騙された。
こんなに騙されたのは、歌野晶午氏の「葉桜・・・」以来。お見事。
どこで自分が騙されていたのか、よくよく考えてみると、結構最初から。
それが分かった時点で、改めてこの作品の面白さ、凄さが分かったし、
ネットでの高評価、人気の具合に納得した。そして大満足。
素晴らしい。シリーズ化も予定されているようで、アイとアニエの物語が
更に読めると思うとちょっと幸せ。
アジアの作家さん、勢いありますね。同じアジアの日本からも新星が出てほしい。