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[日記](読書) グッド・ドーター(カリン・スローター) [日記]


続いて、米国ミステリー作家・カリン・スローターの非シリーズもの
「グッド・ドーター」を読んだので感想と記録。

カリン・スローターといえば、ウィル・トレントシリーズでも、その他作品でも
過激ともいえるプロットで楽しませてくれる作家さんと思うのですが
本作品を読んだ感想はいい意味でも、悪い意味でも少し今までの作品の後読感とは
異なりましたね。

物語はジョージア州に住む、姉妹と母親、そしていわゆる「悪い人」の弁護人を
主な依頼人とする父の4人家族の話。

直近では少女をレイプした男の弁護を行ったことで、その抗議運動により
家を失ってしまっているし、地域からも家族自体が浮いている状態。

さらに家族を追いうちをかけるように、父不在中に引越し先の農家に強盗が押し入り
妹はなんとか逃げたが、母は銃殺、姉は撃たれ障害を追ってしまう。

時は20年ほど流れ、妹は父と同じくジョージア州で弁護士に、
姉も生涯を乗り越え、NYで主に企業のライセンス関連を担う弁護士になっていたが
姉の生涯を乗り越える間の精神的な不安定が原因で、
姉と、ジョージア州に住む父、妹とは疎遠になっていたが、

ジョージア州の学校で起こった銃撃事件(17歳の生徒が学校で発砲し、
校長と生徒1名が死亡)に妹が巻き込まれ、当然のように父が弁護担当になったことで
再び、父、姉、妹が再会し、自身に起こってしまった過去の事件、
そして学校で起こった銃撃事件の真相に立ち向かう・・・・、てな感じ。

今までのカリン・スローターの流れだと、法廷ミステリーなのかなぁ、と
思いきや、新たに起こった学校での銃撃事件は、話が進めば進むほど
あまり焦点があてられず、むしろ過去の話が中心になっていく。
これみよがしに、嫌な裁判官、検察も登場するのだが・・・・・。

弁護士に成長した姉妹が、過去におこった事件によりおってしまった傷、
父親が隠していること、母親の愛情が話のメインなんでしょうね。

ただ、ミステリー作品としては微妙というか、
今までの彼女の作品と同じ気持ちで読んでしまうと、肩透かし感が否めず
重要となる母親の愛情表現も、私的にはピンとこず
最後の数行、最も読者に迫るであろう場面も、心が動くことはあまりなかったかな。

もう少し、テーマを絞って集中したほうが、面白い作品になった気もしますけど
好きな人は、大切な作品になるかもしれませんね。


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[日記](読書) 喪われた少女(ラグナル・ヨナソン) [日記]


ラグナル・ヨナソンの人気シリーズ、女性警部・フルダを主人公にした3部作の
2作目、「喪われた少女」を読んだので感想と記録。

フルダのキャラクター設定の秀逸さとありそうでなかった感(退職直前の女性警部)、
1作目のラストが衝撃的過ぎて、このシリーズがどこに落ち着くのか、どうやって
3作目につながっていくのか、この2作目は何が語られるのか、非常に興味深かった。

1作目(2012年設定)から、約25年さかのぼり、1987~1988年のアイスランド。
首都レイキャビクの北西のフィヨルド地帯の別荘で、10代の少女の死体が見つかる。

作品では、この少女は「ベニ」と呼ばれる少年と別荘で一夜を共にしているが
この死体との関連は序盤では全く語られないが、少年家族の父親が、
この少女殺害容疑で捕まってしまう。ちなみにその逮捕にあたったのは、
1作目でも登場し、適当な捜査と世渡りで出世したフルダの上司で本作品では
まだフルダの同僚である「リーズル」。

物語は、さらに10年経過し、今度はアイスランドの南にある観光地で
断崖絶壁に囲まれた無人島「エトリザエイ」で
30代と思しき女性の転落事故があり、フルダが調査したところ殺人の疑いが分かる。

この女性は、かつての友人たち(4人)で10年前に別荘で亡くなった少女をしのぶため
この島のロッジで過ごしていたという。

で、フルダはこの事件の捜査とかつて別荘で起こった殺人事件の真相を暴くのだが
もちろん、真相というか、事の発端は、またしてもリーズルなんだけども。
同時に、1作目でも語られたフルダの夫・ヨン、そして娘、フルダの母とそして
今回はフルダの父親(アメリカ兵でアイスランド駐屯中、母と出会い帰国)が
この作品(シリーズ)のもう一つのキーとして進んでいく。

ロッジで過ごした4人のうち、犯人はだれか?
途中、父親を見つける為、米国・ジョージア州に赴くフルダは
父親に出会えるのか?


今回も読みやすく、事件そのものはスピーディに進んでいく。
前作が衝撃的なラストだったり、フルダの過去だったり、リーズルの最低具合だったりが
色々、いい具合に「語られていなかった」ので、2作目でそのあたりの「謎」が
徐々に語られて先が気になる内容、かつ大変面白かった。

さぁ、3作目なんだけど、
3作目でついにこのシリーズが完結するのだが、まだ邦訳されていない??
早く、邦訳版が発売されることを切に願います。


フルダ・・・悲しい女性だなぁ。


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[日記](読書) ブラック&ホワイト(カリン・スローター) [日記]


米国ミステリー作家・カリン・スローターの人気シリーズ、ウィル・トレント捜査官の
第9作目、「ブラック&ホワイト」を読んだので感想と記録。

原題は「UNSEEN」。目に見えない、予見できない、という意味らしい。
邦題は、「白」と「黒」で読み終わった時点では、邦題のほうが分かり易いですね、
確かに。どちらが良いというわけでもないけど。

今作でもシリーズで活躍しているジョージア州捜査局特別捜査官のウィル、
そのパートナー・フェイスの面々と、ウィルの恋人であるサラ・リントン医師、
そしてジョージア州・メイコン書のレナ・アダムスとの因縁も過去の作品と同じ。

レナは大物薬物密売人の強制捜査で逮捕どころか、同僚が負傷した挙句、
その売人は自殺する。

その後、レナと夫ジャレッドは自宅で襲われ、ジャレッドは瀕死の重傷、
自身は傷つきながらも、強盗犯に反撃し、1名を殺害、もう1名にも大怪我を
負わすが、その行動について、内部調査をうける。

一方で、メイコンで暗躍している大物の犯罪組織(ボス)と思われる犯罪者を
ウィルが潜入捜査により追っている。

ミステリー小説っぽく、レナを襲った事件とウィルの潜入捜査が交錯し
更に、恋人サラとレナの因縁や、レナとジャレッドに起こった悲劇などが絡み
事件解決と共に楽しめる作品になっていたかな、と。

作品としても、600ページくらいで1冊としては若干、厚めだけど
1冊に纏められているので、一気読みし易い。

全てウィル・トレントシリーズを読んでいないので、わかりませんが
今回はウィルの妻・アンジーが出てこなかったので、不快感は少なかったかな、と。

その分、レナが最低の女の演じるのだが(サラに対して)
最後は、「懺悔」で終わるので、後読感は割とよかった。
事件解決の後日談が若干冗長すぎたキライはあったけど。

何だかんだで次の10作目も楽しみだし、ぜひ読んでみたい。

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[日記](読書) カルカッタの殺人(アビール・ムカジー) [日記]

英国推理作家協会賞・ヒストリカル・ダガー賞を受賞した作品、
「カルカッタの殺人」(アビール・ムカジー)を読んだので感想と記録。

カルカッタは2001年に「コルカタ」という現地ベンガル語の呼称に変わっているんで
すね。私が教科書で習ったのは勿論、「カルカッタ」なのでこの小説を読みながら
カルカッタの地理、歴史を調べて今更ながら(恥ずかしながら)知りましたが。
ミステリー作品を読むと、その地域の文化、風俗、歴史、社会問題の勉強になることが
ありますね。この作品はまさにうってつけの歴史ミステリー。

1919年、英国統治下のインド。「東インド会社」習いましたね・・
この作家は英国・ロンドン生まれですが、インド系ということで、自身のルーツでも
あるインドの英国統治時の問題を知ってほしかったのかな、と。

そういう意味では、コルカタ=宮殿都市という意味があるんだなぁ、とか、
その宮殿を作ったのは英国人。でも、決していいこと(だけ)ではなく
英国人のインド人(というかアジア人)への差別、偽善、迫害の状況が
本作品の全編をとうして語られていて、当時の状況が理解できた。
インド人のルーツを持つ英国人としての視点だし、腑に落ちる感じがある。

で、そんな英国統治のカルカッタのインド人街で英国人が殺害され、
インド人によると思われる証拠が現場から発見される。
カルカッタ赴任、わずか数週間で、警部ウィンダムは同僚、部下とともに捜査するが
みつかった状況や証拠が断片すぎて、真実に近づけないまま
インド人活動家をわずかな動機だけで犯人扱いしてしまう。

冤罪確実のインド人活動家の(死)刑が迫る中、
ウィンダムはなんとか真犯人をみつけ、一件落着で、ミステリーとしては
割と普通だったりするんだけど、伏線というか証拠があやふやだったり
怪しい人間が多すぎて最後までどこに落ち着くのか分からないのと
読みやすさが抜群だったり、そして何より、カルカッタの風俗や歴史が面白くて
一気に読んでしまった。

歴史小説だと歴史や風俗の解説なのか、ミステリーなのか、わからなくて
読みづらい小説が多い(と思う)中、この作品は純粋に
警察小説で、主人公や部下、上司、恋人のキャラがよくて
流石、英国のミステリー賞作品だなぁ、と思った。


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[日記](読書) 続・用心棒(デイヴィッド・ゴードン) [日記]


続いて、デイヴィッド・ゴードンの「用心棒」シリーズの続編(第2作目)、
その名も「続・用心棒」を読んだの記録と感想。

原題は「The Hard Stuff」。「難しいこと、もの」とかいう意味だろうか。
今回は前回のテロ阻止/テロリストの殺害におけるやり残しの仕事をきっかけに
新たな仲間と再会、出会う事から始まる。(やり残し=逃げた一味の殺害)

その仕事の終了後、友人でもあり仲間であるイタリア系・マフィアのボスのジオ、
その他アイルランド系などのマフィアのボスたちから
新たなテロリストの資金となるべく、ヘロインの闇取引に関して
ジョーにヘロインの代金(ダイヤモンド)の調達というか強盗と
さらにその取引おいて、ヘロイン&ダイヤモンドの最終的な奪取の依頼がなされる。

そこで、新たに出会った仲間と、再開した金庫破りの達人・エレーナと共に
それらの仕事に赴くのだが、テロリストの妻が登場したり、
ジョーと相思相愛?のFBI捜査官・ドナとの再会だったり、なぜかふたりの親同士が
仲良くなったり、マフィアのなかに内通者がいたり、
ジオの「癖」が妻にバレそうになったりといろいろな要素が凝縮されていて
大変面白い。

銃撃戦、カーチェイス、心理戦、裏切り、美人、ジョークなど
見事に散りばめられていて、全く飽きない。

まぁ、映像化されてしまえば、「B級アクション」なのかもしれないけど
ジョージ・クルーニーやらでキャストを固めれば
ヒット間違いなしでしょうけど。

続・続・用心棒がでるのかは分からないけど、楽しみですねぇ。
ドナとの恋は、エレーナの再登場は?
ジオとその性癖を知った妻のキャロルとの関係は?
今回新たに出会ったベトナム戦争の帰還兵であり画家も、気になります。


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[日記](読書) 闇という名の娘(ラグナル・ヨナソン) [日記]


続いてというよりも、「白が・・・」を読みながらエアポケット的な時間を
利用してもう1冊、北欧(アイスランド)ミステリ、「闇という名の娘」を同時読み
したのでその感想と記録。

アイスランドのミステリといえば、「湿地」「声」で有名な
アーナルデュル・インドリダソンのエーレンデュル捜査官ものが有名で
重い雰囲気は否めないが面白いシリーズ。

そしてこの作品もアイスランド、レイキャビクを舞台にした刑事もので
初老の、退職直前の女性警部・フルダのシリーズ第1作目。

ミステリものを探す場合、各国賞の受賞作やノミネート作品を探して
その第1作目から読んでいく(当たり前ですけど)。そうすると
シリーズものであるという安心感(面白いハズ、当面シリーズを楽しめる)を
味わえる。

この作品も、警部フルダのシリーズものということで読んだけど
サクサク読んで、読み終わった直後の感想は「なんだこれ!!!???」。

こんな小説、私は読んだことがない(というか記憶がない)。
凄い面白いというか、このシリーズ、この後どうなっていくのだろうか、
驚きというか、心配というか、フルダに道場するというか・・・。

原題(英題)は「The Darkness」、闇である。
フルダは既婚者で娘がいた、その名前がまさに「闇(ディンマ)」。
なので、このタイトルは、そのディンマを指していると思われる。

フルダは、退職前にひき逃げ事件を担当し、その容疑者の女性の尋問を
担当する。その女性は、息子が性被害にあい、その犯人がまさに
ひき逃げ事件の「被害者」。女性は、自身の息子への愛、
変質者への憎しみから、ひき逃げ事件を起こしてしまうが、
フルダはその容疑者同情し、証拠不十分として「事故」にしようとする。

アイスランドのキャリア事情も女性に対して厳しいようで
フルダも挙げた成果のわりに高キャリアは望めなかったようで
さらにあと数か月の勤務を待たず、上司から事実上の「早期退職」を進言される。

それに抵抗するかわりに「あと一つ」事件を担当してよいとのことで
上司に促されるまま、時間つぶしの「未解決事件」を担当することになり
1年前に行方不明になって事故或いは自殺として扱われている事件、
ロシア人の難民認定申請の女性の事件を最後案件として選び、捜査を開始する。

この事件は複雑というよりも、同僚刑事の怠慢によりろくな捜査もせず
「事故」「自殺」とされていることで、複雑な捜査ではなく
幾人かの関係者への聞き取り、証拠の確認で、真相がわかる。

小説の構成で、失踪女性の記録も同時進行するので
どうやって失踪、死につながったかは読者には割と簡単にわかるし、
登場人物も限られているので、だいたいの予想はつく。

ただタイトルの「闇という名の娘」、つまりフルダの娘と物語の関係が
全然見えてこないまま、サクサクと物語は進んでいく。

ひき逃げ事件の容疑者を証拠不十分として取り扱う予定が
恩を仇で返す容疑者=母親の自白により、追い込まれるフルダ。

・・・で、衝撃のラスト。

ラストも衝撃だけど、主人公のフルダが魅力的で好きな作品。

女性刑事というのものいいし、有能だけど退職前、初老で、美人でもなく
科学捜査や、FBIだったり、何か特色があったりするわけでもなく、
夫、娘と死別、フルダの幼少期の母親、祖父母との微妙な関係性から
フルダ自身の思慮深い?性格が非常に良かった。

凄いな、このシリーズ。
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[日記](読書) 白が5なら黒は3(ジョン・ヴァーチャー) [日記]


途中、ケン・リュウの短編小説集の1章をよみ、その後挫折。
続いて読んだのが本作品、「白が5なら黒は3」。

米国フィラデルフィア在住の作家、本作品がデビュー作。エドガー賞などの
新人賞にノミネートされたとのこと。

原題は「Three-Fifths」、米国憲法でかつて制定されていた黒人奴隷制度を
ある意味象徴する法律(5分の3しか権利を認めない)に由来している。

物語の舞台はピッツバーグ。時代は日本でもメディアで報道された
OJシンプソン事件がおこった1995年。その事件の判決が注目されていたころ。

ここまでの内容から、この作品が人種差別、とくにアフリカ系アメリカ人に
対する差別を扱った小説と言う事が分かるし、そもそも読んだ理由のひとつが
それだった。

日本では考えられないような日常である。
もちろん、似たような状況はあるのだろうけど、少なくとも私の日常ではない。

色素異常(と思われる)から白人と思っている若い息子(20代)
白人のシングルマザー
母と息子で家賃を払うためにパートタイムに明け暮れる
母はアルコール依存症(断酒を息子に誓うが、今日も飲んでいる)
父は黒人であることを母からかつて知らされ、
母親とは出産直後に分かれ(母を捨てる)その後死んだと聞かされている
友人(富裕層)は麻薬密売などの犯罪経歴があり3年の刑務所から出所
祖父は白人主義者(というか、当時のマジョリティ的な考えだと思う)

その友人=アーロンは出所後、息子=ボビーに会いに来るが
様子が激変し、黒人文化を愛していた幼少期から真逆のレイシストに変貌。
細身だった体はサプリメント&筋トレで筋肉隆々。
レイシストの象徴のタトゥの散りばめられている。
そして懸念のとおり出所直後にアフリカ系の少年に暴行、殺害してしまう。

ボビーは友人の変貌、暴行、そして何より
自らの出自から恐怖のあまり、その事件から逃げ出してしまう。

アーロンはしきりに、暴行はボビーのためだし
そもそも、大切な友人であるボビーに手を出したりしないという。

ボビーは自らの出自がバレることをひたすら恐れる。
そんな中、偶然、母親が父親とであい、ボビーに真実を打ち明けるが。
追い詰められたアーロンはボビーも巻き込んでしまう・・

この話はストーリーよりも、差別、LGBT、刑務所、思想、法律
そしてアメリカの歴史・文化がぎゅっと恐縮されていることが
全てなんだろうと思う。果たしてこれがアメリカの真実を
どの程度語っているのか分からないし、判断でもできない。

でも、毎回思うのは、こういう重いテーマの作品が
堂々とエンタメ作品としてリリースされ、
そしてエドガー賞という著名な賞にノミネートされることが、
アメリカという国に良心があると言う事なんだと思う。

米国作品を読むとつくづく人種問題、宗教問題が
単純でないことを理解する。
「分かち合う」ことよりも「お互いに干渉しない」方が
個人的には良い気がするのだが・・・。


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[日記](読書) 欲望のバージニア(マット・ボンデュラント) [日記]


続いて米国作家、マット・ボンデュラントの2作目で、映画化もされた作品
「欲望のバージニア(原題:The Wettest Country in the World」を読んだので記録。

物語は、1918年~1940年頃までのバージニア州・フランクリン郡の街にいきる
「ボンデュラント家」のお話。メインは3兄弟(フォレスト、ハワード、ジャック)。

禁酒法が制定されたアメリカで、闇酒を製造する3兄弟。
フランクリン郡では3兄弟が、というよりも、どこもかしこも闇酒が蔓延っており
その中で生きる3兄弟という感じで、その3兄弟に対する暴行事件を巡り
「3兄弟には手を出すな」と物語中ででてくるが、残虐非道というよりも
力に屈しない3兄弟(ボコられても、懲りずに闇酒ビジネスを営む)という感じ。

保安官、州検事は闇酒業者から賄賂を受け取り、それを拒否した3兄弟を襲撃
さらに3兄弟はそれに対して復讐。それを調査しようとする作家。

正直、物語は面白いのかどうか、良くわからない。
マギーという女性や、運び屋の女性、作家、末っ子のジャックとバーサなど
色々登場人物は出てくるけど、正直なにも深掘りせず、なんだかなーで終わる。
一応、賄賂受け取った役人は捕まり、3兄弟は生き延びるんだけど
そのあたりの展開が分かりづらいというか、淡々としているというか、
どこか盛り上がりに欠けるというか。

このあたりは、「運命の日」(デニス・ルヘイン)のダニーを中心に
その闘争と恋愛をドラマチックに展開する小説は異なると思う。
丁度時代も同じくらいですね。運命の日もスペイン風邪が流行ったころですし、
その弟の物語でも闇酒の話でしたしね。

この作品でもスペイン風邪による大量死や、その苦しい生活。
そんな貧しい町民、村民の方々の生活が詳細に語られている。

クライムサスペンスやミステリー、ドラマチックな恋愛などを想像して読むと
少し肩透かしなのだが、この時代を楽しむ歴史作品としては面白いと思う。
そこに闇酒ビジネスが絡んでいるというか、付録というか。

なんとなくアメリカらしい作品だなぁ、と思う。

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[日記](読書) 数字を一つ思い浮かべろ(ジョン・ヴァードン) [日記]


米国ミステリー、ジョン・ヴァードンの「数字を一つ思い浮かべろ」を読んだので
感想と記録。

米国ミステリーといえば、「嗤う猿」シリーズがピカイチに面白かった。
他のミステリーというか、ネイチャー・ライティングというか、クライムものでは
ドン・ウィンズロウの「犬の力」のシリーズがピカイチ。

この「数字を・・・」は、この作家の2010年発表のものらしく
シリーズものとして6作発表されているらしい。

ニューヨーク州の元エリート警察官・ガー二―が
たいして親しくもなかった大学時代の友人で、有名な啓蒙活動化であるマークから
脅迫状(2通)について相談をうけるところから、物語が始まる。
その脅迫状では、タイトル通り、「数字を思い浮かべろ」的な内容で
その数字をもう一つの脅迫状に、その数字を言い当てられていた、というもの。
明らかにトリックがありそうなのだが、脅迫状の内容が個人攻撃であり
その経緯から、知人でもある元警察官・ガー二―に捜査の相談につながる。

ただし、その捜査(あくまで友人としての)の道半ばで
マークが殺されてしまう。その殺され方も猟奇的、儀式的で謎が深まる。

流石にこの時点で地元警察(ニューヨーク州の丘陵地帯の田舎)と共同で
捜査にあたるが、次々と同様の手口で、但し、地理的にも、被害者にも
関係性を見いだせない、殺人が続いていく。
しまいには、ガーニーを直接名指しされた殺人予告まで届くようになり、
クライマックスにつながっていく。

物語の途中までは、「数字のトリック」や「殺人のトリック」が中心で
中盤からはガーニーの妻の存在や、息子の存在、ガーニー自身のトラウマ、
終盤はその謎が徐々に解明し、犯人が明かされていくので
割とよくある王道ミステリーの様な気がする。

ただ、犯人含めて、物語の構成も、なんだか王道すぎて
面白いけど、「凄い」ということにはならないかな。

でも2010年のものなので、そのあたりは仕方ないかもしれない。

もっと、この作家の作品が読みたい。
この作品では、ガーニーの妻・マデリンが怪しすぎるほどの切れ者だったし。
何かありますよね、この奥さん。


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[日記](読書) 猟犬(ヨルン・リーエル・ホルスト) [日記]

アメリカのネイチャー・ライティングを離れ、北欧ミステリーに戻る、、と
いっても、スウェーデンやデンマークではなくノルウェー発。

作家はオスロの南、"ラルヴィク"出身の元警察官、ヨルン・リーエル・ホルスト。
ノルウェー作品ということでは、「オスロ警察殺人捜査課特別班」が有名だし
ぶっちゃけそれしか知らないような。

本作はこのシリーズの第8作目にあたるようで、「ガラスの賞」など
数々の賞を受賞しているとのこと。

邦題は「猟犬」で原題も同じ意味の「JAKTHNDENE」。
冒頭、タイトルをにおわせる「犬(スハペンドゥス犬)」がでてくるが、
猟犬とは「捜査官」のことを意味しているようで、物語には直接絡まない。

ラルヴィク警察の警部(50代)、ヴィスティングは自ら捜査責任者を担った
17年前の拉致事件の捜査における証拠偽造の罪を告発され、停職処分に。
ヴィスティングの一人娘(30歳くらい?)は大手新聞に勤める報道記者で
その告発の影響で、異なる殺人事件を追うことになる。

ミステリー小説らしく、この17年前の拉致事件、そして証拠偽造、
新たな殺人事件、そしてもう一つ発生する少女失踪事件の真相が
見事に「一つの線」になっていく。

この作品が面白いのは、このヴィスティングは既に50歳になっており
物語において終始、淡々と捜査を進め、17年前に見過ごした、或いは
考えが及ばなかった事柄を詰めていくこと。

その代わり、報道記者の娘のほうは、積極的に動き回り
新たに発生した殺人事件を追っかけていく。

この対比は面白いし、最終的には勧善懲悪となっているところもよい。
爽やかなミスディレクションというか、いい人であってほしいひとは
「いいひと」だったし、その逆はその逆。

少しだけ残念なのは、この作品は既に第8作目で、
ヴィスティングのプライベートが良くわからないということ。
既に奥さんとは死別しているハズだし、同性している女性や
報道記者の娘さんなどのことが良くわからないし、もっと知りたい。

このシリーズは久しぶりに好きな作品ですねぇ。特にヴィスティングが。

アメリカミステリー、ハリー・ボッシュやV・Iとは全然違うし
北欧ミステリのヨーナ・リンナ、マルティン・ベックとも違う
いいキャラです。




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