[日記](読書) 世界を売った男(陳・浩基) [日記]
「世界を売った男」(陳浩基著)を読んだので記録。
「世界を売った男」・・・なんとも珍妙な、意味深なタイトル。
実はデヴィッド・ボウイのアルバムタイトルらしい。
陳浩基は「13・67」や「ディオゲネス変奏曲」など時間を扱ったSF作品や
過去・未来が入り混じるミステリー作品が多い。
舞台設定は香港、ニューテリトリー、九龍、旺角など。
今回の作品も香港界隈を中心で、数年間の記憶を失った警察官が、
記憶を失う直前の未解決事件(現在は決着している)の真相を追うというもの。
過去の記憶、記憶を失っている間の自身の行動を紐解きながら
徐々に事件の真相に近づいていくストーリーは大変面白かった。
犯人は残念?ながら「やっぱり」という感じなのだが、
記憶を失う、ということと、精神的な乖離をうまく使って
納得がいくような落としどころにしている。
自分は何者なのか、なぜ記憶がないのか、
未解決事件の犯人とその共犯、警察官、怪しい関係者たちが
思惑や証拠、過去の記憶が入り乱れて、どっちに転ぶのかドキドキする。
最終的に「それはないんじゃない?」と思ったけど
一応、「はい、それはないです」というオチだったし、納得感はあった。
過去の記憶と現在の調査のバランス感というか、つなぎも見事だったかなぁ。
最後のシーンも、現実の記憶じゃなかったのね、というオチだと思うし
デヴィッド・ボウイの歌詞(タイトル)も上手く処理されていると思う。
強いて難を言えば、土地、氏名が中国語読みなので覚えるのがつらい。
時々、フリガナをしているけど、覚える中国語読みの単語が多く、
とても覚えてられない。私は同氏の小説が3作品目なので
なんとか、香港界隈の中国語読みが何とかついていっている感じ。
・・・が、その読みづらさを克服るするに余りある面白さ。
丁度よいSF感で、香港の雑多な文化も相まってサイバーな感じ。
今後も期待の作家さんですねぇ。
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