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[日記](読書) ひげよ、さらば(上野瞭) [日記]


久しぶりの異色作、上野瞭の「ひげよ、さらば」の感想と記録。

この作品は、1980年代にNHKで放送された人形劇の原作小説でもある。
私の心の中にずっとあった「一文字」と「ヨゴロウザ」、「ハネカエリ」という
奇妙な名前の愉快な猫たち。

正直、劇のちゃちな人形だったな以外、ストーリーなその他登場する猫たちの
風貌、名前の記憶は全くないのだが、どこか、ずっと片隅にこびりついていて
このほど、原作小説があるというのを知って読んでみた。

まず、「大長編」ということでハードカーバーにして、800ページ弱もの文量に
驚く。というか、その時点で読み切る自身がゆらぐ。

読み始めても、記憶にあった懐かしさは、最初の数ページを読んだだけで
満たされて、先に進まないというか、良くわからないストーリーに手が進まない。

記憶喪失の猫が、片目猫に出会う。原作小説では、「一文字」が「片目」となっいたり
若干、名前や登場猫が異なるみたい。結局、「ハネカエリ」は最後まで出てこなかった。
そもそも「ハネカエリ」がどんな性格だったのかも記憶になりのですが・・。

「片目」と「ヨゴロウザ」は、「ナナツカマツカ」の丘に住む(縄張りとする)
奇妙な仲間と性格(性癖)の野良猫たちに出会いながら、
片目の夢(=この丘に住む猫たちのリーダーになり、野良犬たちに対抗したい)の
実現のために説得を開始するが、猫たちの性格上、てんでバラバラ。

そんな中、ヨゴロウザと片目は、リーダーの資格として猫たちから条件をあたえられた
「アカゲラフセゴ」という供養塔と墓地を縄張りとする、野良犬たちの偵察に出向くが

野良犬たち(ハリガネ一派)に襲われ、片目とヨゴロウザは逃亡の末、はぐれてしまい
ヨゴロウザは、ハリガネたちを撃退、野良犬のもう一つの集団、タレミミ一派に
救われるが、この事件で、ヨゴロウザは片目を失い、穏やかな性格が激変し、
一足先に「ナナツカマツカ」に戻った片目とともに、再び、野良猫たちのとの
生活を再開するが、リーダーとなったヨゴロウザは、猫たちに厳しい訓練を強いる。
そして自らは、マタタビ漬けになってしまい、心と体を壊してしまう。
そんな中、ナナツカマツカ一帯にも厳しい冬が目前に迫り、
タレミミ一派が猫たちを襲う。

前半のかなりのページが、猫たちの紹介、しかもわけのわからない性格と名前の猫。
学者猫、うらない猫、歌い猫、まねき猫、黒ひげ、オトシダネ・・などなど
結構な苦行。ミステリーでもないので、ひたすら読んでいく感じもつらい。

中盤にはいると、野良犬たちとの闘争により少しだけ面白くなるが
ヨゴロウザの激変ぶりに、若干ひく。
終盤にはいると、野良犬たちとの対決になるので、ページをめくるスピードもあがり
結末まで一気読みという感じ。

ヨゴロウザは、最後、「ナナツカマツカ」に流れ着くまでの記憶がよみがえるが
決して、楽しい記憶ではなく、少し悲しい。というかかなり悲しい。
そして、なくした記憶を思い出すきっかけもかなりつらい。

終始、猫たち(野良、飼い猫)の悲しい性というか、厳しい人生というか
そういう切なさが小説全編を覆っているし、奇妙な名前以外は
子供向けの作品ではあるものの、かなりシュールで、大人向けだと思う。

NHK人形劇でどこまで、小説の内容を反映させたのか記憶にもないし、
わからないけど、よくまぁ、放送したなぁ、という感じ。
さすがに「片目」は「一文字」と名前を変えてはいるけども・・・。


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