SSブログ

[日記](読書) 証言拒否(マイクル・コナリー) [日記]


カルロス・ルイス・サフォンの4部作を読み終え、少しミステリー疲れでしたが
日本のライトミステリーでリハビリし、やっと、海外ミステリーを読める心身に。

ということで、読んだのはマイクル・コナリーのリンカーン弁護士「証言拒否」。
刑事弁護士・ミックは、単純に面白い。
上下巻、900ページくらいもあるのに一気読み。しかも「加速」する面白さ。

主人公・ミック自身が相手検察側の作戦を「ボレロ」と例えたように
徐々にギアあがり、一気にクライマックスを迎える展開。見事。

今回は、不景気にあえぐミックが、
サブプライム的な不動産の差し押さえ問題(民事)にその活動範囲を広げた結果
同問題の依頼人・リサが、銀行のローン責任者を撲殺したとされる事件を扱う。

ミックはいつものメンバーと新たに加わったアシスタントと共に
「無実評決」を勝ち取るため、検察側の証拠つぶし、無実の仮説を展開する。

900ページもある長編でも、正直最後の最後まで、「誰がやったのか」は分からない。

リサはミックの指示に従わず、時には欺き、更に悪徳"映画制作会社"の恋人と共に
弁護側を混乱させる。検察側も必ずしも手段を選ばなず、ミックを追い詰めるが、
ミックの弁護手段も、判事、検察、そして自身の元妻・娘を利用するなど
「無実評決」を手に入れる為、真実探求とは別のところで、
なりふり構わず作戦を実行する。そして評決は・・・・。


ミックの弁護手段は、前述の通り、無実や正義という視点ではなく
どこに「穴」があるのかを探り、法的に「無効」或いは「それっぽい印象」を与えること。
今回もリサがやったのか、やらなかったのかは、どうでもよく
新人アシスタントに「良心」を問われる場面も数多くある。
ミックは一貫して「良心」は、弁護に不要の立場をとり、判事・検察ウケは良くないことを
承知の上。(というか彼の客観的な評価は「悪徳」))

だけど、物語の結末は、ミックの弁護手段や信念とは別のところ、
つまり、ミックの内面に帰結するところが面白いし、それが魅力。
そればボッシュシリーズでも同じで、マイクル・コナリー作品の最大の魅力。

nice!(3)  コメント(0) 

[日記](読書) インジョーカー(深町秋生) [日記]


深町秋生、組織犯罪対策課八神瑛子シリーズの4作目、「インジョーカー」の
感想と記録。

今回も八神瑛子の無双ぶりは半端ない。
富永も執拗にスパイを仕立て、八神のヤクザとの癒着を探るというか、
すでに規制の事実としてわかってんだから、意味があるのかと思うが、
富永は八神の同僚、「花園」をスパイに仕立てる。

今回は、前作で警察内部の悪事を暴いたことで監察も八神を監視する。
監察は、八神の同僚、井沢を弱みを掴み、スパイに仕立てる。

そんな中、八神の情報提供者で、印旛会系千波組の実力者・甲斐から
組織内の跡目(人事)騒動から、情報提供者としての関係を絶つことを
告げられる。

そん中、同じく八神が親しくする中国マフィアから、
ベトナム人の女性の捜索を依頼され、
同時に起こったヤクザの襲撃事件の背景、甲斐たちの跡目争い
そして同僚、井沢の裏切りなどが、絡んで‥という展開。

最新作(5作目)もすでに発売されているのだが、八神には
できれば、そろそろ警察をやめて、裏の社会の女王になってほしいなぁ。

少し影の薄くなった、富永の復活はあるのか・・


nice!(3)  コメント(0) 

[日記](読書) アウトサイダー(深町秋生) [日記]


深町秋生、組織犯罪対策課 八神瑛子シリーズの三作目、
「アウトサイダー」の感想と記録。

前作で、印旛会千波組との取引で夫の死因に関する情報を手に入れた八神。
引き続き自身の子飼いを使って情報収集の勤しむなか
死因に関係する高杉組の組長(自殺)の関係者の情報を得る。

関係者の居所を探すなか、敵対する上司・富永も自身の情報網を使い
警察内部(と八神)の監視を続ける。

八神と富永は徐々に夫の死因が、印旛会と警察上層部の癒着に関係することに
気づくが、八神を狙って謎の集団が襲う。
さらに八神は、組長関係を調査するなかで拉致されてしまい、
事前に連絡しておいた仲間(ガード担当の女子プロ)を経由して
富永に真相を伝える。

という流れだけども、やっぱり八神の無双ぶりは半端なく
前作で肋骨を3本折られた状態で、格闘を何度もこなし、防弾チョッキの上から
至近距離で銃撃もされる。今回は愛車・スカイラインでカーチェイス&事故もこなし
さらに調べた情報は全て”当たり”で真相まで一直線。

ものすごいタフネス、有能そして、全ての男を虜にする美貌。

ほんと、ものすごい作品というか、ヒロインですね・・・。


nice!(3)  コメント(0) 

[日記](読書) 死んだレモン(フィン・ベル) [日記]


フィン・ベルの新人賞受賞作、「死んだレモン」の感想と記録。
タイトルは直訳で、そもそもの英語タイトルが「Dead Lemons」。
意味は、レモンの意味は、落伍者とか、欠陥品とからしい。

実際、主人公(作家と同名)のフィンは、アルコール依存症により結婚生活が
上手くいかず、挙句、飲酒運転により事故、下半身不随となっている(離婚)。
その為、カウンセリングを受けつつ、自身の人生に見切りをつけ(現実逃避)
ニュージーランドの最南端に移り住んだ。

物語は、フィンが絶壁に車イスを押され、死に瀕する場面(現在)からスタート。
そこから、約5か月前に引っ越してきたところと、現在をいったりきたりする。

フィンは、引っ越してきたコテージの前の家主(女性)が
介護施設で暮らしており、コテージに手放すきっかけとなった娘と夫の事件を知る。
と同時に、隣家(畜産・漁師)に住む3人の兄弟たちに嫌がらせに悩むことになる。

この3兄弟の一族は、この地域ではアンタッチャブルな存在であるものの
地域住民も、地域の警察も手が出せない厄介ものたちで
過去の事件の主犯と考えられているが、証拠がないため、無実のまま生活している。

フィンが過去の事件を調査するとともに、徐々に3兄弟から命を狙われ・・・
で、現在に結び付くというながれ。

果たして過去の事件の犯人は3兄弟なのか?
フィンは助かるのか?


ニュージーランドの歴史や、スポーツ(車いすラグビー(マーダーボール))に
触れながら、話が進んでいくのだが、
少々、解説が長すぎるキライがあるため、鬱陶しいと感じてしまうのが残念。

ニュージーランド発のミステリーは大変貴重なので
今後もどんどん日本語訳をしてほしいですねぇ。


nice!(3)  コメント(0) 

[日記](読書) アウトクラッシュ(深町秋生) [日記]


組織犯罪対策課 八神瑛子シリーズの2作目、「アウトクラッシュ」の感想と記録。

今回は前作から3か月後の設定。
覚せい剤の密売を取り押さえる八神たち。今回は「覚せい剤」(メキシコ)。

上野で「腕」と「舌」だけが見つかる事件が発生し
警視庁では何かしらの報復によるものとして捜査を開始する。

一方、前作で印旛会系千波組・組長の娘の事件を解決した八神は
千波組長・有嶋に招かれ、娘の事件の謝礼を断りつつ
亡き夫の情報との物々交換で、関西最大組織が関東でさばく覚せい剤の事件に
手を貸すことになる。

上野で見つかった人間の部位は、どうやらメキシコのカルテルから
派遣された殺し屋の仕業で、関西組織内で裏切りが発生した模様。
その裏切りの人物(2名(1名は既に死亡))を千波組が確保したものの
暗殺者の行方が分からないため、八神にその協力を依頼。

八神は、その裏のコネクションを使って、グラニソ(雹)と呼ばれる暗殺者を
見つけるべく奔走する。

と、同時に八神に敵対する上司は富永も、八神の監視し、
ブラックジャーナルとの癒着を暴こうとする。

今回も八神の無双ぶりが半端ない。
暗殺者や元空手有段者との格闘、組織の上を行く頭脳、そして美貌。
最終的にはラブホをガス爆発させ、暗殺者を抹殺しようとする。

乃南アサの音道さんや、誉田哲也さんの姫川さんもそこまでは・・・という感じ。
何となく、SP(岡田准一さん主演)の笹本さんを思い出しますねぇ。


nice!(3)  コメント(0) 

[日記](読書) 業火の市(まち)(ドン・ウィンズロウ) [日記]



ドン・ウィンズロウの新シリーズ(3部作)の第1作目、「業火の市」の感想と記録。

麻薬、マフィアと言えば、ドン・ウィンズロウというイメージを持っておりますけど
今回はもろ、マフィアもの、となっております。

時代は少し前、1980年代。ロードアイランドのプロヴィデンスと南部のビーチ。

ビーチでくつろぐアイルランド系マフィア、イタリア系マフィアたち。
どちらもロードアイランドを縄張りとしているが、お互いの「稼業」は荒らさず
友好関係を作っているが、ひとりの美女が現れたことで、少しずつ関係性に亀裂が。

主人公は、アイルランド系マフィアのひとりで、ドンの次女を妻に持つダニー。
ダニーの父はアイルランド系マフィアの元ドン。ただし、かつてのドンである父、
更に現ドンの娘を妻に持つものの、実力のわりに「現場」仕事ばかり。
ただダニーは特にそれ自体を根に持つことはなく、日々を過ごしているが
状況の変化に危惧を持っている。

私が知っているドン・ウィンズロウ作品と同じように、状況は「悪く」なっていく。
それも最悪の方向へ。美女を取り合うアイルランド系マフィアとイタリア系マフィア。
陰謀、野望が渦巻き、2大勢力は戦争状態に入る。

ダニーはなんとか自身の家族や父を守りながら、緊張状態を緩和しようと奔走。
そんな中、FBIから裏切り(ビジネス)の誘いも入ってきたりもするが
ダニーは機転を利かせながらなんとか、独力で生き延びていこうとする。

そこに更に追い打ちのように、妻に「癌」が見つかり、病状は悪化するばかり。
ダニーの母のチカラもあり、当時の最高の医療を受けるが死は免れない状態。

戦争はどうなるのか、組織は保てるのか、そしてダニーの決断は・・。

面白いですね、さすが、ドン・ウィンズロウ。
でも、日本では任侠ものになると思うのですが・・、ごく妻とか。

3部作で実は面白いことに、抜粋がこの第1作目にもついていて少し読める。
今後の第2作目、第3作目も、ただのマフィアものなのか、少し気になりますね。

面白いといえば、面白いのですが、
どちらかと言うと、こういう作品は「デニス・ルヘイン」のほうが
純粋に読み物としては面白いのかな、と思ってみたり。



nice!(3)  コメント(0) 

[日記](読書) 捜索者(タナ・フレンチ) [日記]


タナ・フレンチの「捜索者」の感想と記録。
彼女の作品を読んだのは、「悪意の森」とこの作品で2つめ。

「悪意の森」はダブリン郊外の刑事、ロブとキャシーが活躍するお話しでしたが、
今回は国(アイルランド)は同じでも、西部に移住してきた
アメリカ人の元警察官、カルが地域に住む子供の依頼により、その兄を「捜索」する話し。

アイルランドというと、どうしてもイギリスの「北アイルランド」を想像するのですが
彼女の作品は、アイルランド共和国ということで、"アイルランド"から想像する
独特の重々しさはない。

出だしは「悪意の森」同様、少し暗めのトーンから入る。
移り住んだ地域の自然や、改修が必要な家屋(の元の家主の趣味とか)とか、
いかにも"事件起きそう"、"死体出そう"、"地域の人たちがいじわるそう"とか。

カルは自身の移り住んだ家屋の改修しながら、徐々に隣人のマートの助けもあり
田舎の人々に受け入れられつつある状態。
そんな中、元警察官の習性か、自身が子供に見張られていることに気づき、
その子供、トレイとと共に、トレイの消えた兄を捜索することになる。

捜索を開始すると、マートや地元住民からそれとなく"警告"を受けるようになり
トレイの身の危険を考え、捜索作業を中止しようとするが、
トレイの"秘密"や、兄の消えた理由と地元住民の警告理由が明らかになり・。

この作品を読んで、タナ・フレンチの「悪意の森」を思い出したし、
ウィリアム・K・クルーガーの、保安官シリーズと同じ感じで
まったくつながりはないんだけど、彼女の作品は
ミステリーというよりも、主人公、仲間たちの内面など「群像劇」に近くて、
「捜索者」もミステリー的な要素の面白みは、残念ながらそんなにない。

それよりも、カル自身の問題(別れた妻と娘)や
トレイの秘密、そして地元住民との関係性のほうが物語的に大事で、
消えたトレイの兄(とその原因)は、あまり意味をなしていないというか。

なので、カルやトレイ、マートが今度どうやって、この田舎で暮らしていくのか
そういうのが気になる。是非、シリーズ化して、
この田舎暮しや、カルなどのエピソードを増やしていってほしい。
そうすれば、なんかかけがえのない作品(シリーズ)になりそうな気配がする。


nice!(3)  コメント(0)