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[日記](読書) 木曜殺人クラブ(リチャード・オスマン) [日記]


極上のエンタメ作品のあとは、「木曜殺人クラブ」でしっとり目に。

原題も同じで「THE THURSDAY MURDER CLUB」。
アガサクリスティ作品に似たようなタイトルがあるとのこと(解説より)。

ロンドンの南東、ケント州にある高級老人介護施設の入居している
ご老人の方々が開催する「木曜殺人クラブ」では、
クラブ創設者であり元警部ペニーが持ち出した過去の捜査資料を基に
事件捜査を妄想して楽しんでいる。

・・が、ペニーは高齢から記憶障害を患い、現在は意識がない状態で
夫のジョンや、クラブメンバーが静かに見守っている。

現クラブメンバーは、クラブ創設者でもあり、リーダー的な存在のエリザベス、
最近加入した元看護士のジョイスなど、
現メンバーも個性的なおばあちゃん、おじいちゃんたち。

そんなとき、施設の増設を目論んだ施設経営者とその相棒が殺されてしまう。
彼らは経営を巡ってイザコザがあったようで・・・
誰が彼らを殺したのか?

経営方針の違いにより殺した?
過去の事件の報復?
増設のために墓地が取り壊されることに反対する神父?
住居者?

ここぞとばかりに木曜殺人クラブのメンバーが、徐々に真実を暴いていくのだが
この作品は北欧ミステリーのような、複雑な怪奇なプロットが魅力の作品ではなく
木曜殺人クラブや、協力者・関係者たちの会話や人柄、そして
メンバーのミステリアスな過去を楽しむ作品だと思う。

どことなくヨハン・テオリンの「エーランド島4部作」を思い出した。
この作品もおじいちゃん探偵が大活躍するけどおじいちゃんの過去(人生)、
エーランド島の歴史・自然、文化、島民との会話が魅力的な作品で、
シリーズを読めば読むほど、作品愛が深まりました。

恐らくこの作品もそんな感じなんだと思う。正直、この作品だけ読んでも
ネットで高評価だったり、自国でバカ売れのような印象はなく
正直「そんなに・・・?」と思ってしまう。(いや面白いけども)

第2作も既に決まっているようなので、
日本でも刊行されることを祈っております。

個人的には「ワニ町シリーズ」のようなハチャメチャな
ご老人たちが活躍する作品よりも、こっちのほうが好きかな。

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[日記](読書) シリア・サンクション(ドン・ベントレー) [日記]


ドン・ベントレーのデビュー作「シリア・サンクション」の感想・記録。
原題は、"without Sanction"。

承認なし?
制裁無し?。意味は良くわからいけど、要は「無茶苦茶」という事か・・。

ネットでも高評価だったけど、確かにひたすら面白かった。
久しぶりに文句なし、と思った。

グレイマンと比較されているとおり、"工作員もの"。グレイマンのほかにも
リーチャーやその他無茶な工作員の小説は数多くある。が、

この作品のDIAオペレータ(シリアを担当する工作員的な)は、
元レインジャー部隊で当たり前のスキルは持ち合わせているものの、
その中身はひたすら人間。その相棒もひたすら人間くさく、
お互い心身ともに数か月前の作戦失敗で「負傷」している。

今回の主人公(ドレイク)は自身の協力者家族を殺され、相棒・フロドも
片腕・片足の機能を失う。その責任から、ドレイクは協力者家族の亡霊(妄想)を
見るようになり、結果、DIAに辞表を提出。愛する妻にもとにも帰っていない。

そんなとき、DIAの尊敬すべき(元)上司から、招集命令が届き
嫌々ながらも、自身へのけじめ、仲間を助ける、という「教え」を守るべく
かつての職場、内戦中のシリアに、米国軍の捕虜奪還に赴く。

この作品が面白いのは、前述の通り、ドレイクが非常に人間くさいということ。
仲間が負傷すると傷つくし、敵とはいえ、少年兵を殺すことを躊躇する。
勿論、勝てない相手もいるし、骨もおれれば痛みで動けず、銃弾にも屈する。


ボロボロになりながらも、なんとか、「仲間」を助けるためにひたすら
前進し、最後は、「その仲間」に助けられて、何とか九死に一生を得る。

読み手は、常にウィット/皮肉にとんだ表現で状況説明するドレイクに惹かれる。
絶体絶命なのに「笑う」。
この話は、シリアの内戦、それに関係する米国(政府)、ロシア。
主に米国政府の「大統領選挙」前の支持率を気にする連中と
現場で命のやり取りをする米国兵、そしてシリアなどの兵士の実情。

現実的に、現在も内戦は続き、ウクライナ情勢ものっぴきならない状態。
決して、この物語を「楽しん」ではいけないのだと思うけど
真実を投影している物語なんだと思う。

戦いがなくなることを祈っております。
面白い小説が、ただのフィクションであることが「平和」なんだと思う。



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[日記](読書) 阿片窟の死(アビール・ムカジー) [日記]


アビール・ムカジーの歴史ミステリーシリーズの第3弾、
「阿片窟の死」の感想・記録。

カルカッタの殺人(第1作)、マハラジャの葬列(第2作)に続いて
サム(イギリス人警部)、サレンダーノット(インド人部長刑事)の活躍。

今回は、サムとイイ感じだった美女・アニーがあまり登場しないが
相変らず二人はつかず離れずの関係。

そしてサムは、阿片中毒が進行して健康問題になっており
サレンダーノットや周りの関係者にも中毒がバレ、立場が危うい。

というか、阿片を吸うために出向いた店のがさ入れに遭遇し
危うく逮捕されかける冒頭。そこで中国人と思しき惨殺死体を発見。
数日後、別件で同様の手口で殺された、普通の看護婦。

調査を進めると次々に同手口の殺人が発生。
一件、手口以外の接点がない殺人事件がつながり初め・・・

このミステリーが面白いのは、まず時代背景。
1921年。イギリス領となっているインド、カルカッタ。

ガンジーの非暴力による独立宣言など史実と重複し、
当時のインドの風俗、生活、そして地理が
さり気なく説明されていて、サム、サレンダーノットのキャラもよく
物量もそこそこだけど、読みやすく、エンタメ性も高い。

今作品では、遂にサムが阿片中毒からの更生も目指して旅立つ
次回作では、健康状態はまともに戻っているのか。

今回は、いままで重要人物だったアニーがあまり登場しないし
彼女のミステリアスなところが生かされていなかったので
次回作では、そのあたりも気になるところですねぇ。


良い作品。


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[日記](読書) 夏の陰(岩井圭也) [日記]


続いて、日本の作家・岩井圭也の「夏の陰」の感想と記録。

直近読んだのが、カリン・スローターの残虐、救えないシリーズだったけど
こちらのテーマは「罪」「罰」、そして「赦し」。

京都で運送屋さんで働く20代後半の男
ダメ男の父が、自身が中学生の頃、警察官を射殺、直後に自殺

府警機動隊で働く、同じく20代の男
父は機動隊員だったが、撃ち殺されている。

つまりは、同一事件で父を失った加害者の子と被害者の子の
その後の人生を、「剣道」という共通の支えを通して語っている。

エンタメ作品ではあるけど、テーマは重い。
第3者としては、加害者の子の、どうしようもない差別、中傷に同情を覚えるし
この作品自体の主人公もこちら(被害者の子)側と思う。
前半、切ない子供時代、そして肩身の狭い現状、正社員すら拒否し、ひたすら
地味に暮らそう努力している。母とは亡き父の面影を理由に分かれて暮らしている。
子供頃から生きる支えとして剣道に励むが、大会には出ていない。

被害者の子のほうも、行き場のない怒り、笑いすら奪われ、
縛られた人生にも同情を覚えるし、今の世の中、「被害者」も中傷される事実は
改めて、昨今のSNSの怖さを思い知る。
そんな「子」も、機動隊の父とその友人から、剣道を教わり
父を失った後は、「被害者の子」として生きる支えとして剣道に励み、
現在、府警機動隊、特練生。

そんな二人が、偶然に出会い、京都府の県道大会に挑む。

エンタメとして、簡単に読む分には面白いと思う。簡単に読める。ほぼ1日。
ストーリー設定も出来すぎ感もあるくらいだし、正直最後のくだりは「不要」と感じた。
まぁ、いちおう、ストーリー上、重要な設定なんですけどね・・。
それが無くても、被害者の警察官は、「救った」と思う。人としてきっと。

ただ、せっかく面白いのに、日本の小説の悪いところで文字数が少ないところは
残念でしかたない。
悲惨さを描けというわけでもないけど、もっと、そのあたりの情景やストーリー
現状の恋愛、生活を追加した方が、もっと、最後の場面(試合)がアツくなるし
そもそも大会そのものも、駆け足過ぎて、もっと
その大会に向けての練習やら、
勝ちあがる各試合のハラハラドキドキが出来たんじゃないかなぁ。
もしそうできたなら、ほんとにすごい作品になっただろうなぁ。

簡単に読む分にはいいんだけど・・・。

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[日記](読書) 凍てついた痣(カリン・スローター) [日記]


アメリカの人気ミステリー作家カリン・スローターのグラント群シリーズ、
そして、サラ・リントン検察医シリーズの第3作目
「凍てついた痣(A FAINT COLD FEAR)」の感想と記録。

グラント群シリーズでおなじみの、
サラ・リントン(検察医/小児科医)、ジェフリー(元夫・群警察署長)、
レナ(元警察官/ジェフの元部下、現大学保安警備員)が中心。

今回も、誰も救えないストーリー。
カリン・スローター作品を読むと、ほんとに「病んでる世界」だな、と。

今回は、サラの妹、テッサが妊娠中に何者かに襲われ、すんでのところで
一命をとりとめるが、嬰児は亡くなってしまう。
そもそも、テッサが襲われた現場は、たまたまサラとともに
事件現場(大学)に立ち会ったことが発端。そこにサラを呼んだのはジェフリー。
サラ、ジェフリー共に、サラの両親から責められながらも
その事件(大学生の飛び降り(自殺)or 他殺の可能性)を調査するが
第1発見者、大学関係者など、周辺で次々と残虐な事件が発生し、
いずれも同大学に勤めるレナが、事件に関与している証拠があがる。

過去の経緯から、ジェフリー、サラに激しく反発するレナは
果たして・・・・

というか、現在、ウィル・トレントシリーズで、レナ、サラは活躍しているので
レナが犯人なわけないでしょう、、ということになるのですが

事件の開発そのものよりも、冒頭の通り、カリン・スローターの作品の
登場人物たちは、前・悪の境界線があいまい。

ジェフはサラを愛しているものの、精神的に追い詰め
さらにレナに対してもかなり冷たい
サラはサラで、ジェフに頼ってみたり、レナに冷たくしたり・・・
レナは相変わらず、やりたい放題
それ以外の登場人物も、何かしら「悪」で。

まぁ、現実社会、完全に「善」なんてありえないけど
ここまで、酷いこともないよなぁ・・なんて、日本が異常なのか
たまたま私自身が「間抜け」なのか。

彼女の作品は面白いけど、読む側に「痛み」を強いるねぇ。。。

次作も楽しみ・・・?


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[日記](読書) MEMORY'メモリー)(吉田恭教) [日記]


珍しく日本のミステリ作品「MEMORY 螺旋の記憶」。

この作家さん自体、残念ながら全然存じておらず、初めて読んでみた。

この作品が最新刊のようで、読んで気が付いたのですが
どうやらシリーズものだったらしく、
この主人公・槙野(探偵)と有紀(刑事)の作品はもう1作?あるらしい。

日本のミステリ作品にありがちに、よく言えばサクサク読めてよい
悪く言えば、単純というか内容が薄い、もう一つ何かあれば・・・という感じ。
決して悪くはないのですが。

探偵事務所にイワクありげな、人物調査依頼があり、調査を進める所長
時は流れ、再び、探偵事務所に同一人物から息子が行方不明になったので
調べてほしいとの依頼が届く。どうやら過去の調査依頼と関係があるようで。

このあたりは、ちょっと面白そうで。
でさらに、少し意味深な、記憶に関する、妄想・空想の章がハサミこまれ
さらに面白そうな展開にさらにテンションがあがる
調査を進める中で、連続殺人が発生し、いよいよ「おおお」って感じなのだが

終わってみれば、中途半端というか、伏線を回収できていないというか
あっさりし過ぎているというか。

キャラもストーリーもすごくいい感じなんですけど
海外ミステリの複雑さや、文字数の多さに読み慣れていると、
なんかもう一つ、パンチが欲しいところ。

前世の記憶がキーなんですけど、その女医さんは?とか
もっとも全国的に同一ケースで殺人が、とか、なんかこう・・、なんだろう。

面白いんですけどね、これはこれで。
主人公たちのキャラも設定(鉄仮面とか、女性刑事とか)も
別になくても良い内容になっているのも残念。
せっかく、プロフィールが尖っているのに、そこに着目した捜査の場面とか
プライベートとかがあまり触れられていないのが、もったいないなぁ。

海外ミステリだと、そのあたりを深く掘り下げて
ストーリーとうまくつなげていくのにねー。



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[日記](読書) プロジェクト・へイル・メアリー(アンディ・ウィアー) [日記]


続いて、人気SF作家のアンディ・ウィアーの新作、
「プロジェクト・へイル・メアリー」の感想と記録。

"へイル・メアリー"というとNFLファンの私にとってはなじみ深い。
QBトムブレイディからTEグロンクへのへイル・メアリーパスも記憶にあるし。
残念ながらパス失敗におわり、負け試合となった。
多くの日本人にとっては逆になじみが薄い言葉でしょうねぇ。

ようは「一か八か」のプレイで、今回の作品も
アンディ・ウィアーの作品らしく、「一か八か」の宇宙旅行。

・・・が、内容はいたって普通のSF作品で、上巻の途中までは
なぜ、宇宙旅行の理由、未知の生物、太陽系の衰退などなど楽しく読めた。

ところが、上巻の途中から私にとって予想外の展開になる
なんと同じような境遇の異星人・科学者と遭遇し、科学者同士の交流が始まる。

勿論、全く違う生態系で、言葉も、科学力も違うんだけど
こういうストーリーって、散々読んだし、映画でも沢山あるので
興味がそがれてしまった(特に下巻)

個人的には異星人との遭遇話は、最近では
「あなたの人生の物語」(テッド・チャン)のほうが良かった。
こちらの作品では、異星人との遭遇はあくまで「飾り」で
メインテーマはまた別にあったので、後読感がよかった。

プロジェクト・・のほうも、感動的だし、スリリングな展開もあるけど
まぁ、分かり易い大衆むけのSF映画用でしょうか。

ただいかんせん、ある程度SF作品を読んでいる人には「またこの展開か」と
言わざるを得ない展開なので、興味が続かない人が多いんじゃないかなぁ。

未知の生物が見つかる部分までは、JPホーガンばりのミステリアス作品
だったのですが・・。




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[日記](読書) 彼と彼女の衝撃の瞬間(アリス・フィーニー) [日記]


続いて、ネットでも高評価だった英国産ミステリー、
「彼と彼女の衝撃の瞬間」(アリス・フィーニー)の感想と記録。

読んだ直後の感想としては、トーキョー・イヤー・ゼロ東京3部作を読んだあとの
作品ということもあり、「非常に読みやすい」作品だった。

確かに面白い。でも、どこか古い。

登場人物も少なめで、こみいった話もなく、殺人事件の犯人は誰?という
至極シンプルなミステリー(サスペンス)。

"第1級"という触れ込みだけど、1級かどうかおいといても良い作品。
でも、どこか古臭いし(繰り返し)、少し強引な設定もある。

古い友人(しかも仕事上のライバル)をみて気が付かない
その旦那とも寝たこともあるのに・・妻のことを一切知らない
日付と時間をあえて書いたり
あれやこれやで、ミスディレクションを誘っているんだけど
終わってみれば、古いミステリー(サスペンス)映画を観たよう。

日本語のタイトルが示す通り「冗長」なキライがあるし、
原題は「HIS&HERS」なのでシンプルなんだけどね・・
あえて、「冗長」なタイトルつけたのであれば「皮肉」なんだけど。

まぁ、トーキョー・イヤー・ゼロを読んだ後の
リハビリには適していましたねー

次は何を読もうかなぁ。



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