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[日記](読書) チェス盤の少女(サム・ロイド) [日記]


邦題「チェス盤の少女」、原題は「The Memory Wood(記憶の木)」。
サム・ロイドのデビュー作でネット上で、結構良い評価だったので読んでみたので
その記録・感想。

邦題のほうがとっかり易いタイトル。主人公は13歳の少女。
母と二人暮しで少し精神疾患があったり、生活は質素だったりするけども
二人とも仲がよく、少女はチェスが好きで、チェスをやっている間は
パニック障害が発生することもない。
今回はイギリス南部の街、ボーンマスで開催されるチェスのユース大会に出場する為
母娘でボーンマスの大会会場(ホテル)に赴き、大会に参加していたところ
試合の合間に娘が誘拐されてしまう。

この小説もアンソニー・ホロヴィッツ氏だったりその他の小説家も利用しているように
構成に工夫がある。

まず、小説はこの少女と誘拐犯の一味(少年)、そしてそれを追う刑事(女性)の
視点で語られ、かつ、誘拐(監禁)の日数がタイトルについている、
「イライジャ・6日目」のような。

少女は監禁中、あたまのなかでチェス盤を思い描き、自身の記憶や
事件の重要なキーワードなどを、それを記憶・分析していく。
「e8に少年の言動・分析結果を記憶する」など。

このあたりは「チェス」がタイトル・キーワードになっているので
その内容の通りになっているのだが、正直、チェスの分析により、
事件が解決したり、例えばこの少女が逃げ出したり、するようなことはほぼない。
実は事件のキーは「The Memory Wood(記憶の木)」のほう。

なので、チェスの天才少女が、誘拐&逃亡&事件を解決みたいなヒロイン小説を
思い描くと少し肩透かしを食らうと思う。
もちろん、少女の機転(というか、非現実的と思うような天才的な機転と心理)で
事件は解決に向かうのだが。

結果として犯人は誰なのか?みたいなところは、B級小説の常とう手段となっている
ミスディレクションだったり、よくあるような設定なのでそれ自体は驚くこともなく
そのため、恐らく賞レース的なものには無縁なんだとおもう。
ただ小説としては良く出来ていて、事件解決には少し悲しいエピソードもアリ、
読む側としては、急展開だったり、意外な展開だったりで評価が高いんだと思う。

私個人としては、もっと「チェス」の戦術をもとに展開してほしかったのだが
「The Memory Wood(記憶の木)」、その「木(或いは森)」のほうに
ストーリーが展開されたり、それ自身がキーになっているのが、タイトルどおりで
作家の誠実さがでているのかな、と思う。邦題タイトルの問題なのでちょい残念。

だけど、原題のざっくりとしたタイトルよりも
チェスの少女が事件解決!を連想するようなものが売れやすいと思うしね・・・
まさかの犯人!とか、精神異常の誘拐犯に拉致された少女、とか
小説の概要を纏めてみても、もはや題材にしつくされた設定なんで売れないよね。

まぁなにはともあれ、内容はあまり愉快なものではないのだが
しっかりと解決する(したのか?)ので、まぁ、それなりに面白い作品だったかな。


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